「おったからさん♪おったからさん♪」
ここは街からちょっと離れた山の中。
街市場で買い物をしている時に、近くに盗賊のねぐらがあると聞き付けたあたしは自称保護者の監視を潜り抜け、悪党どもを壊滅させた。
小さな盗賊団だからどうかな~と思ったんだけど、なかなかいいお宝そろってんじゃん♪
ガウリイを苦労して撒いて来た甲斐もあるってもんよ。
鼻歌を歌いながらあたしはその場でお宝を分別し懐に収めていく。
まずは持ち運びしやすい小さな宝石類から袋に入れて──
その時、不意に背後に湧き上がる殺気!!
「──このやろォォッ!」
全員しばき倒したと思ったが、残っている奴がいたかっ!
「!!」
きぃいん!!
あたしはふりむきざま、腰の剣を鞘から抜き取り、襲い掛かってきた奴の剣を止める。
よし、一撃は止めたからこのまま距離を取ってあとは呪文でカタをつけて……
あたしが後ろに大きく跳んだその時──
ずるっ!!
足元が滑った。
勢いをつけて退いたあたしは、受身を取る間もなく転倒し、頭をまともに打つ。
──そこであたしの意識は暗転した。
「リナ! 大丈夫か?」
……ん?
ガウリイの声……
あたし──ああそうか、確か盗賊いぢめをしてて……
意識が浮上し、ゆっくりと目を開ける。
──あれ?
何、この真っ暗な部屋は?
あたしはベッドに寝かされているようだが、真っ暗で何も見えない。
「リナ、大丈夫か?」
「ガウリイ? 何よこの部屋は! 明かりぐらいつけてよね」
起き上がり、文句を言う。
その時ガウリイが驚いて息を飲んだようだった。
「先生……」
ガウリイが誰かに向かって言う。
そういやもう一人室内に誰かがいる。
ガウリイではない男の人の声がした。
「彼女は、目が見えてないようですね」
って何!? あたしの目が!?
「はぁっ!? な、何いってんの!?」
「リナ、本気で言っているのか? 今は朝で、この部屋も眩しいくらいに明るいんだぞっ!」
……ちょっとそれってどういうこと?
「どうなってんの!? 状況を説明してよっ!?」
あたしは動揺して自分の目をごしごしとこする。
そんな、バカな!
「昨日、お前さんまた盗賊いぢめに行ったろ? あわてて探したら、今にもとどめを刺そうとしている盗賊と、倒れているお前さんを見つけたんだ」
あ、そうかあたし気絶してしまったんだ……そこをガウリイに助けてもらったのね。
あたしの側に誰かが近寄ってくる気配がする。ガウリイの気配とはちょっと違う。
薬草っぽい匂いがして……ガウリイが先生って呼んでたのはこの医者ってこと?
その人はあたしの下瞼をべ、と開き、診察を始めた。
ガウリイはあたしを発見した時の話を続ける。
「んで、盗賊をぷち倒してお前さんを助けたんだが、はたいても起きないし、よくよく見たら頭にでっかいたんこぶがあったんで、医者んとこにあわてて運んできたんだ」
……はう。ガウリイに発見されなかったらどうなっていたことやら。
でも目が見えないなんて、どうして?
「──特に異常は見られませんね。怪我も治療しましたし……考えられる原因としては、頭を打ったショックによるものかと思われます」
「治るのか?」
そうよそれ。それが一番大事だっての。
「おそらく一過性のものと思われます……自然に治りますよ」
「本当か!? よかったぁ~」
ガウリイが安堵の息を漏らす。
あたしも大きく息をついた。
「自然にって……どれくらいで治りますか?」
「そんなに長くはかからないかと思いますが、様子を見てみないことには。回復するまでここに滞在することは難しいですか?」
医者はこの街への滞在を勧める。う~ん、この眼じゃ旅をするのも難しいしね……。
あたし達は、眼が治るまでここに滞まることにした。