ガウリイのシャツ着て茶巾縛りにされてるリナさん。

「ぶえっくし!」
 しとやかさのかけらもないくしゃみが響いた。
「あーっと。大丈夫か?」
 すべってこけて、ガウリイは足元が濡れるくらいですんだのだが、どういったわけかリナは頭から川につっこんで全身ずぶ濡れになってしまったのだ。乾くまでと仕方なくシャツを貸してやったが、このところ涼しくなってきたからか水温も低かったらしい。シャツをポンチョのようにして足までかぶり、火の側で縮こまって服の中で膝を抱えている。裾から覗く素足の先は寒そうにすりすりと動いていた。
(……オレの服の下は何も着てない……のか……)
 その足の爪は自分のものよりもちんまりと小さくて、浜辺で拾う貝のように薄いピンク色をしていた。
 リナを見ながらしばらく黙っていたが――上半身裸のガウリイは、すっくと立ちあがるとリナの前に詰め寄る。
「な、なに? ――ってうにゃあああ!?」
 服の裾を素早くひとまとめにし、取り出した紐できゅきゅっと結んだ。借りたシャツから顔だけ出している状態のリナはごろんと地面に転がる。
「なんなの!?」
「このほうがあったかい! な!」
 シャツの中で手足をジタバタさせるリナを必死に押しとどめるガウリイ。
「燻製肉を口に運んでやるから、それ食いながらじっとしてろって!」
「どういう状況なのよ!」
 互いによくわからないまま、謎の言い合いが続いたのだった――。

■ 終 ■
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