洗脳

「さあ……あなたの本心をさらけ出して……なにもかも教えてちょうだい」
 怪しげないで立ちの女は妖艶に笑い、拘束されて動けないでいるガウリイの頬を撫でる。
 薬で朦朧とさせられているガウリイは怪しげな術をかけられ、もはや逃げることもできなかった。
「あなたの望むままの女性が現れて、あなたを愛してくれるの。さ、理想の女性を教えて……」
「うぅ……理想……?」
「そうよ……」
「オレの……理想……」
「絶世の美女? それとも金銀財宝で贅沢させてくれる女? それとも……」
「……ダメだ……」
「え?」
「オレ……の、理想……は、盗賊いぢめをしなくて……」
「なにそれ?」
「ツッコミを……もうちょっと穏やかにしてくれて……」
「ツッコミ? え?」
「あと……たびたび死にかけないでくれるとすごくたすかる……」
「なに言ってんの?」

 *****

 どこぞの街のカフェテラスで。二人の女性が語り合っている。
「ねえ、こないだ言ってたすっごい好みの旅人とはどうなったの? ものにするって張り切ってたわよね? もう洗脳完了したぁ?」
「ああ、彼ね……うん……すでに洗脳されていたっていうか……深層心理まで染まっていたというか」
「どゆこと?」
「ああいうパターンもあるんだって勉強になったわ」
「つまりは『無理だった』てこと?」
「無理……無駄……手遅れ?」
「へえ~」
「これ以上やっても無意味ってわかったから、すぐ解放しちゃった。もっと洗脳しやすい、いい男みつけるわ!」
「次いこ次!」
「お~!」
 怪しい話に花を咲かせる二人なのだった。




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