追っ手をまくために二手に分かれ、道無き道を進んでいれば突然の豪雨! 行く手を遮る野生動物の群れ!
俺とガウリイさんはあっという間にずぶ濡れの泥だらけで散々な有様だった。
「あのお嬢ちゃんはひとりで大丈夫ですかね?」
「あー、リナは見かけよりもすごくしぶと……いや、たくましい? から、心配の必要はないぞ」
「そうなんですか?」
相棒を信じるガウリイさんを信じ、俺たちは道を急ぐ。
「あ、リナだ」
「えっどこに……」
それからだいぶ経って、遠くから「おーい」と駆け寄ってくる魔道士の姿がひとつ。俺たちも小走りになって足を早めた。
軽快な足取りを緩めずに、ガウリイさんの真正面に駆け寄るリナさん。ぶつかるんじゃないか──と思ったら、ギリッギリの直前で足を止めた。
「ガウリイ、おっちゃん! 無事だった?」
「……おう」
「そちらはどうでした?」
「雨に降られたり追っ手をぶちのめしたりしたけど、他は何もなかったわ」
なにか……おおごとをさらっと流された気がするんだが……。
リナさんは「さ、またひと雨くる前に急ぎましょ」と踵を返して歩き出す。
「な、心配いらなかっただろ」
「いりませんでしたね……でも、会えてとても嬉しそうだ」
「そうか?」
「俺はてっきり、ガウリイさんに飛びついてキスでもするのかなと思いましたよ」
そのくらいの勢いと表情だったのだ。
同意を求めてガウリイさんを見てみれば、ぎょっとした顔で固まっている。
「……どうしたんです?」
「いや……あんたに……オレの頭の中を読まれたのかと」
その困惑たっぷりの言い方に、俺は思わず吹き出して笑ったのだった。