Ok,Gourry!

「もうこんなに片付いてるの!?」
「荷物少ないし、二人でやったらすぐよ。ガウリイ、アメリアにマグカップ」
「ほいよ」
 1LDKの室内は、つい先週引っ越してきたばかりとは思えないほど整然としていた。
 玄関わきに纏められた段ボールだけが引っ越しの名残を見せている。
「あー寒い。アメリア、そこにどーぞ。ガウリイ、こたつつけて」
「ほいほい」
 リナは我さきにと手足をこたつに入れて暖を取る。
「ガウリイ、コーヒー」
「おう」
「ガウリイ、テレビの音大きくして」
「おう」
「そういえばポスト見てないわね。ガウリイ、見てきて」
「おう」
「あー届かない。ガウリイ、ゴミ箱取って」
「ほらよ」
「ねえガウリイ、みかん剥いてー」
「仕方ないな」

「あの……」
「なに?」
 リナはガウリイにひと房ずつ分けちぎってもらったみかんをあむあむと頬張っている。
「いつもこんな感じなの?」
「ん? なにか変? いつもこうだけど。ね、ガウリイ」
「おう」
 せっせとみかんの皮を剥き続けているガウリイからは無頓着な返事。
「呼びかけるだけでなんでもしてくれるなんて……スマートスピーカーより便利ね」
「でしょ?」
「便利ってゆーな」


「お邪魔しました。新居訪問できてよかったわ……でも、ガウリイさん」
 アメリアは人差し指をぴっと伸ばして諫めてくる。
「リナを甘やかしすぎちゃダメですよ! ますます我儘になっちゃいます!」
「オレ甘やかしすぎかな?」
「んなことないわよ! あのねえ、ガウリイがぼけっとしてて何も言わないからあたしがあれこれ言ってるように見えるだけなの。対比の問題! ガウリイが言ってくれればあたしだってやったげるもん」
「……だとよ」
「リナ、どっちかが一方に尽くすだけだとバランスがおかしくなるわ。助け合いの精神が重要なのよっ! わたしは同棲とかしたことないけどっ」
「はいはい、わかってるって」
 苦笑しつつ、アメリアを見送った。


 扉を閉めて、リナはガウリイに振り返る。
「――あたしだっていろいろやってるわよね?」
 寒いから動くのがイヤでついついガウリイに頼むことが増えているだけだし、とリナは頬を膨らませた。
「よし、じゃあオレもリナにお願いしてみよう」
「ほえ?」
「リナ、キスして」
 言って、自分の口を指差す。
「……まったくもー」
 くいくいと合図に袖を引っ張られ、リナが届くようにとガウリイは屈んだ。

■ 終 ■


スマートスピーカーの名前がガウリイだったらいいのに…
返答も松本さんボイスでさあ…
一日中呼びかけるわ…(怖)
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