無垢な剣士

「ばあちゃん! 見てくれた!?」
 はるか年上の兄弟子を完膚無きまでに叩きのめし、少年は練習剣片手に祖母に駆け寄った。
 しかし、祖母の目に歓喜はかけらもない。
「もう……相手に戦意はなかったのに……なぜ、戦うのをやめなかった?」
「え……」
「なぜ……?」
 悲し気に問われて、少年は口ごもる。
「怪我してもあとで治せばいいだけって……父上がいつも言ってるし……一番になったら、ばあちゃんが喜んでくれるかなって……」
「ちがう、ちがうんだよガウリイ……!」
 祖母の、皺だらけのやさしい両手が少年の頬を包んだ。
「わたしを喜ばせるためでも、光の剣を継ぐためでもない。自分のために強くなるんだよ、ガウリイ。自分を、認めるために」

 模擬戦で勝っただけだ。
 言っていることが難しくてよくわからない。
 祖母に掻き抱かれながら、困惑した。
 ただ――腕を上げても剣は自分を幸せにしてくれるわけではないのだと、少年はそのとき初めて思った。

■ 終 ■
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