計測

 ふらりと入った防具屋で、リナは目的もないのにあれこれと冷やかしている。ガウリイも特に必要なものはなく、店内をぼけっと見てまわっていた。
「ねえねえ、ガウリイ」
「なんだ?」
「ちょっとこっち向いてよ」
「?」
 リナへ向き直ると、彼女は背伸びも何もせずにただ真正面からぎゅうとしっかり抱き着いてきた。
「……え、へ、はっ?」
 息の漏れるような変な声しか出せない。
 リナはふむふむと合点のいった顔をして、陳列されている鎧を指差した。
「あたしの思ったとおり、あっちにあるアーマー、胸囲がガウリイと同じくらいだったわ。ベルトである程度の調整はできるんだろうけど。
「ああ、う」
「それを確認してみたくなっただけよ。あたしの目測って正確ね~」
「…………」
 店主が声を上げて笑う。
「嬢ちゃん、彼氏に抱き着くならもっと熱い言葉もかけてやりなよ」
「なに言ってんの、なんでそんな……」
 リナはそこでやっと表情をこわばらせた。
「リナ。あまり……周囲から誤解されるようなことはだな」
「かっ、勘違いするほうがおかしいんだもん! 胸囲測るときはこうするもんでしょ!?」
「しないよ。メジャー使うし」
 店主が自らの首にひっかけているメジャーを示した。
「お前さんのは斬新な測り方だな」
「違うんだってば!」
「彼氏以外の人にはこういうことしちゃダメだよ」
「しないしっ!」




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