「リナさーん、ちょっとこの資料見てもらっていいですか?」
返事のあとにすぐ部屋の扉が開かれる。
アメリアは部屋に踏み入り、そして室内にいるリナの姿を見てぎょっとした。
「え!? ガウリイさんの服!?」
「あ? ああ。そうよ」
リナはだぶだぶの上着を着ていて、見覚えのあるそれは確かガウリイが日頃身に着けているもののはず。
リナの部屋にガウリイがいるのかとついつい探してしまったが、そこにはリナ一人の様子だった。
「あの……なんでガウリイさんの服をリナさんが着てるんですか?」
「なんでって。洗濯したからよ」
さも当然という顔で言われたが、アメリアの困惑は深まる。
しばらく会わないでいるうちに二人と世間の常識とに齟齬が発生してしまったのだろうか。
「えっ……と……リナさんの服が乾くまで、ガウリイさんの服を着てるんですか?」
「あーうん、そうなの」
リナが裾を両手で摘まみ、ひらひらとさせた。
「最近気付いたんだけど、この上着くたくたで着心地いいし、ゆったりしててだるんとした感じが部屋着にちょーどいいのよ。だからあたしの服を洗濯してるときとかにガウリイから借りてるの」
「はあ……なるほど」
とは言うもののその理由に納得も同意もできなかった。
リナは「あとなんだかいい匂いするしー」などと言って上着の匂いをすんすん嗅いでいる。「嗅いでみる?」と勧められたがアメリアは後ずさって辞退した。
「じゃあ、リナさんがその服を借りてるあいだ、ガウリイさんはどうしてるんですか?」
「ん? 自分の部屋に下着姿でごろごろしてるんじゃないかしら」
「そしたら、ガウリイさんの服はいつ洗うんですか?」
「あたしの服が乾いたら洗って返してるの。合理的でしょ」
ちっとも合理的じゃない、と思う。
でもリナは名案と思っているようだし、おそらくガウリイもこの状況を楽しんでいる。
どういったいきさつから「その上着の着心地が良い」ことに気付いたのか詮索したいところだが、余計なことは言わないほうが利口だろうと考えて、アメリアは資料を手に用件を話し始めた。
■ 終 ■
「服を交換」「見つめ合う」「キスはしてあげない」「彼シャツ」
のお題アンケートで彼シャツが1位となったので書いたものであります。
たわしはそのへんに転がってます!!!!