考えすぎる葦

「今日は二部屋だから!」
「お? おう」
「寝るのも別々だから!」
「わかった」
 宣言されたが、月のものはまだなはずで、ガウリイは不思議そうな表情を隠さなかった。
「……その。あんたと『寝る』のは嫌いじゃないのよ」
「そりゃよかった」
 嫌いならあんなに盛り上がらないよな、と内心で頷く。
「嫌いじゃないんだけど、でも」
「でも?」
「その。やってるときってそれしか考えられなくなるのが、なんつーか、病気みたいっていうか」
「……よくわからん」
「ああもう! つまりね、熱中しすぎて、怖いの! だからちょっと頭を休めたいのよ!」
 体じゃなくて頭のほうを休めたいのか──
 あれこれ考えすぎてしまうリナらしい。
「わかった。んじゃたまにはオレを気にしないでゆっくり寝てくれ」
「そうするわ。ベッド占領して、ひろびろ寝るんだから!」
「おー。」

 だがしかし。
 ガウリイは夜更けに呼び出された。
「…………どうしたぁ?」
 欠伸が堪えられない。しょぼしょぼとした顔でリナに問う。
「眠れなくて……」
「あれから寝てなかったのか?」
 リナはうんと頷く。
「なんだか、いろいろ考えてるうちに眠れなくなっちゃった……やってるときのほうが、余計なことを考えずにすんでよかったんだわ」
「頭の回るやつはあれこれ考えすぎだな……お前さんはきちんと頭も体も休めたほうがいいぞ?」
 リナの形のよい眉がしゅんと下がる。
「眠れるかな」
「お前さんが寝付くまでここにいるよ」
 ガウリイがリナのベッドに横たわると、続いてリナもベッドにのぼり、縮こまるようにしてぴたりとくっついてくる。一人用のベッドは狭いのでそのほうが都合がいい。落ちてしまわないように、背中に手をただ添えた。
「おやすみ、リナ」
「おやすみ……」
 リナはぎゅっと目を閉じる。
 寝息を確認するまで、ガウリイはリナの顔を見詰め続けた。

  終



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