夕暮れの廊下をとてとてと歩き、2学年上の教室を訪れる。友人らと放課後の無駄話に興じていたらしいガウリイがあたしに気付いて、椅子から立ち上がった。
「お待たせガウリイー」
「おう、帰るか」
友人らに軽く合図をして、鞄を手にしたガウリイがあたしの横に並び立つ。
「今日はどっかに寄るか?」
「んー、ちょっち金欠だから安いとこで」
入学してから、いつの間にかこうして二人でつるむようになっている。
食べ歩きをしたり、遊びに行ったり、ただ駄弁ったり。
馬が合うと言えばいいのだろうか。
性格も年齢も性別も違うというのに、一緒にいるとすごく楽。
それこそ、最近は同性の友達といるよりもガウリといるほうが楽しく感じるほどに。
――自分はそうだけれど、彼はどうなのだろう?
「どした?」
「ガウリイって教室じゃ男の友達といるよね」
「そうだな」
「女の子の友達っていないの? あたし以外で」
「……いないな」
なんだか苦笑いしてる?
「なんで? 女子に人気あるでしょ。うりうり」
ガウリイは話してみたら天然でへんな奴ではあるけど、顔はイケメンなのでそりゃあモテるのである。
「……めんどくさいんだよ。ちょっと親しくなっただけで噂になったり勘違いさせたりしてさ。オレにその気がなくても話がややこしくなったりするから、そういうのはもういい」
「へえ……そうなんだ」
何があったのか、こりごりっぽい。
恋愛うんぬんは今はいらないってことなんだろう。
あたしは――そういう勘違いをしようもない気楽な友達ってポジションだから、ガウリイも安心して側にいてくれてる。
でもいつか、ガウリイが友人らをさしおいても仲良くしたい『特別』な女の子が現れたら。こうしてあたしとつるんでくれることもなくなるのだろうか。
そしたら……どうしよう?
や、別に、あたしは一人で行動するのは平気。
ガウリイに会う前に戻るってだけだし。
――それなのに、どこかがぞくりと寒くなってあたしは唇を引き結んだ。
「……そんなんじゃ彼女できないわよ」
「別にいい」
「じゃあ、あんたもあたしもクリスマスは一人かあ」
「は? クリスマス? 彼女とか関係ないだろ」
「でも普通はカップルで過ごしたりするじゃない」
「クリスマスはカップルのものじゃねーぞ。つーか、一人ならクリスマスはオレといればいいじゃないか」
「ガウリイと?」
「おう、二人で過ごそう。チキンを買い込んで、手をベタベタにしながら食う。プレゼント交換は……そうだな、千円で設定な」
「やすっ」
「お前さん今月金欠なんだろ」
「はっ。そうだった……じゃあ、駄菓子を千円分詰めとくわ」
「おい、プレゼントの中身を言うんじゃない。開けるときの楽しみが減るだろーが!」
口を尖らせるガウリイに、つい吹き出す。
さっきまでのもやもやした気分はあっさり晴れて、あたしは目先の予定に心をはずませた。
■ 終 ■
恋愛にだけ自覚は薄く自信もないリナちゃんってのを書きたかったのです。
ガウリイはすでにいろいろと根回し済みかも