今度の依頼のターゲットは、古城を根城にして略奪活動をする盗賊団だ。しかし……表向きは貿易商会と名乗っているために、地元の警備団も手が出せないでいた。
それならばと、乗り込む口実のためにガウリイをわざと敵側に捕らえさせ、リナが救出に向かう段取りとなった。
リナ自身がおとりになろうか、という提案もしたが、ガウリイが猛反対した。そしてガウリイは間抜けな密偵として古城に潜り込み、連中にわざと捕らえられたのだ。
むやみに人命を奪うような危機的状況ではないものの、ガウリイだって無事では済まないかもしれない……。
リナは急いで敵地に乗り込み、急襲をかけた。
「……なんなの、あんたのその格好!?」
ガウリイの捕らわれているという牢屋に飛び込んだリナが思わず叫ぶ。
格好というかなんというか。
ガウリイは一糸まとわぬ全裸で鎖に繋がれていたのだ。
「抵抗しないように、つって武器と一緒に服も全部没収された」
リナがガウリイを直視しないように視線をそらしつつ手枷の鍵を外し、恐る恐る聞いた。
「えーと。身ぐるみ全部はがされたわけだけど……それ以上のこともされた? なんつーか貞操的なイミで」
「されるかっ。全裸なだけだ!」
「う~ん……何か身につけられるもの、ないかしら」
リナは自分の荷物を探るが、たいしたものは持ってきていない。
「包帯……は細すぎて意味ないし。ロープ……はもっと細いし、ダメね。あ、小さめの魔道書があるわ」
「それでどうしろと」
「本を開いてうまく前を隠しながら歩く」
「いやだ」
「もう、わがままね!あとは何もないわよ」
「なんで。リナのマントをちょっとだけ貸してくれればいいじゃないか」
「ええ!?」
「あからさまに嫌そうだな……」
「だって……マントの下は全裸って、かなり変態レベルが上昇する行為なのよ!」
「非常事態だったらいいじゃないか!少しの時間だし。それも嫌だってんなら、リナがオレの前にぴったり立って隠すとか」
「それもいや。ヘンタイに背後取られてるみたいじゃない」
「オレはヘンタイじゃねぇ!ああもう!なんで、こう、魔法でぱっと服のひとつやふたつ出せないんだよ!」
「あたしは魔道士!お伽話の魔法使いじゃない!」
言い争ってるところで二人の表情がはっと変わった。
「ガウリイ」
「おう!」
リナの投げたショートソードの柄の部分をガウリイがぱっと掴み取り、騒ぎを聞きつけて通路に入ってきた残党を目にもとまらぬ速さで切り伏せていく。
「もう大人しく捕まってる必要はないんだからこっちのもんだぜ。なめるな」
「全裸でかっこつけないでよ、お願い……」
「あ、この倒れてるおっさんの服をもらえばいいんじゃないか?」
「えー、それを?サイズも合わなさそうだし趣味悪いデザインだし臭そうよ?全裸のほうがまだマシね」
「そこにケチつけるのか………」
「あーもう、仕方ないわね、あたしのマント貸してあげるからこれ羽織って。さあ、あんたの武器と服を取り返しにいきましょ!」
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「すーすーする……」
「ねえ、やっぱ、ちょっと離れて歩いてくれない?」
「しくしくしく……」
「あ、また敵が来たわ!」
「おい。この格好のまま戦わなきゃならんのか?」
「そりゃそうよ。さあ行け!頑張れガウリイ!」
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それからーーその地方では、下着を履かずにマントを羽織り、戦闘の際には自分のマントをめくって相手を威嚇・挑発し、怯んだところを攻撃するという戦法が伝わっているそうな。
様々な学者が研究しているが、由来は諸説あり、いまだ定かではないとされている……。
おわり。